スパンティーク峰(7027m)遠征報告③


こんにちは、白石店登山売場の小山田です。
今年6月に行ったスパンティーク遠征の報告第3回目です。
展開が遅くて申し訳ありません。
①②を読んでない方は↓こちらを読んでからどうぞ!

スパンティーク峰(7027m)遠征報告① : 秀岳荘みんなのブログ!! (exblog.jp)
スパンティーク峰(7027m)遠征報告② : 秀岳荘みんなのブログ!! (exblog.jp)


2024年6月4日・・・・・BC休養

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朝起きると薄っすらと雪が積もっていました。
BCで迎える初めての朝。
テントから出ると、うねる様に広がる氷河とカラコルムの山々・・・・
憧れていた景色が朝から眼前に広がるのは本当に感動的です。
天気が良いのですぐにでも登りたい気持ちになりますが、
この日は休養です。
焦らずに、まずはこの高度に体を慣らすことが大事です。
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休養と言っても、やることがいっぱいあります。
明日から使う上部キャンプ用のテントやがジェットボイル、
ロープやスノーバーなどの共同装備の点検と仕分け。

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こちらは上部キャンプでの食料です。
BC以上ではすべてα米(白米、リゾッタ)フリーズドライにしました。
これは全員の朝ごはん分。
登山活動はおおよそ20日間。7人分の装備なのでかなりの量です。
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共同装備と食糧の点検・仕分けなどを終えて
午後からはそれぞれBCでの自分の家であるテント内の整理整頓。
個人装備もそれなりに量になります。
上部キャンプでは一つのテントで2~3人が泊まりますが、
BCでは一人一つのテントで生活し、
なるべく疲れやストレスをためないようにします。
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今回、BCにはスパンティークを同じルートから登る
Hさん、Tさんの2人の日本人パーティもいました。
別パーティという事で登山活動は別々でしたが、
ほぼ同じ日程でエージェントも同じであることから
キャラバン中からBCを共有し、
ルートの情報交換をふくめ、色々なお話をさせて頂きました。
2人はこの日は休養することなく、
さっそく上部に登っていきました。

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BCでは朝昼晩とパキスタン人スタッフたちが
美味しいごはんを作ってくれます。
そして美味しいだけでなくも多い!!
いつも完食できないくらいの料理をスタッフが次々に運んできてくれます。
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昼食と夕食の後にはデザートが出ます。
時にこんなプリンやマンゴー、スイカ、
缶詰の桃など・・・。
至れり尽くせりのBC生活です。
2024年6月5日
C1→4700m付近→BC 小山田、他5名

BC 宮崎
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今日からついに登山活動開始です。
BCからは上の図のように3つのキャンプサイト(C1~C3)を
作りながら頂上を目指す計画です。

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高所では一気に標高を上げると
高山病の恐れがあるので少しずつ高度に身体を順化させるのが原則です。
なのでこの日はC1予定地のの5050mまで上がって
テントなどをデポして一旦BCまで戻ってきます。
そして、
翌日に再びC1に登ってそこで泊まるという予定です。

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テントやシュラフなどを持つと結構ザックが重くなりました。
キャラバン中はずっと軽いザックでの行動だったので
久しぶりの重荷に不安になります。
薄曇りの中出発です!
ゆっくりと呼吸を意識しながら
登っていきます。

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BCマネージャーである宮崎さん(白石店ウエア売り場スタッフ)は
フィールドスコープ
BCで僕らの行動を見守ってくれていました。
宮崎さんは他にも無線で
上部で登っている隊員との連絡や
BCでの装備品の管理など
BCで登山隊員のバックアップ・サポートといった役割を担ってくれました。

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さて、張り切って出発ししたものの、
出だしの緩い斜面から早くも
息が上がって苦しい・・・。
そして荷物も重い、いや重く感じる。。。

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傾斜がきつくなると
早くもこの辺りからメンバーの中で
調子の良い悪いが出てきました。

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C1までの序盤はルートはこのように雪がない
箇所も多かったです。
こんなふうに大きめの岩が積み木のように
重なっている部分などは足場が不安定で
余計に体力を消耗します。

結局この日は
調子の上がらないメンバーもおり、
C1予定地まで登れず
4700m位にテントなど装備品をデポして
BCまで戻りました。
下山中には湿った雪も降り出し
疲労の濃い行動初日となりました。



2024年6月6日 
BC→C1→BC 小山田 他2名
BC 宮崎 他3名

前日の遅れを取り戻したいところですが
体調不良のメンバーもおり、
この日は3名での行動となりました。
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前日よりも少し早めに出発。
今日もオーバーペースにならないように、ゆっくり登ります。


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前日のデポ地を通り過ぎさらに上を目指します。
朝はそれなりに寒いのですが、
日が昇ると日本で言えば春山のような暑さになります。
デポ地の4700mを過ぎたあたりから積雪が増えるのですが
ズボズボと雪面に足が埋まる様になってしまいます。
酸素の薄い中、
このようなところでは容赦なく体力が削られていきます。

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ようやく5000mの肩につきました。
ここには大きなケルンがたっており、いい目印になっています。
このころになると、次第に天気が崩れだし、
周りの景色も見えなくなってきました。
登山活動序盤はこのように
天気が大きくは崩れないものの、安定しない日が多かったです。

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ケルンから少し進んだ地点にC1として
テントを設営しました。
まだ、5000mには体が順化していないので
テントを立てる作業も
ゼェーゼェーハーハーと言う感じで苦しく、
疲れるというより
「何もしたくない・・・。」という気持ちになります。
写真を撮る余裕もなく、
なんとか一張りテントを立ててBCへ下山。
とりあえず目的のC1設置は出来ました。


2024年6月7日
BC→デポ地(4700m) 2名
    BC  小山田、宮崎、他3名
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BCからの朝の景色。
この景色は最後まで
飽きることはありませんした。
この日は体調回復したN副隊長と20代のメンバー最年少であるSが
C1目指して出発。
他はメンバーBCにて休養となりました。
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ちなみに、BCから見た山頂方向はこんな風景です。
とはいってもBCからはC1手前の肩までで山頂は見えません。


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なので、この日はこれですっきりすることにしました!
これ、なにか、分かりますか~?


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このテント、『シャワーテント』なんです!
まあ、別にシャワーが備えつけてあるわけではないのですが・・・。
大きなバケツにお湯をもらってこの中で湯浴びをする、
というわけです。
お湯の量も限られるし、
太陽が出ている昼間しか寒くて出来ませんが、
それでもこんな高所で
頭を洗えて汗を流せるだけでもとてもとてもすっきりとするんです!

日中はあったかければ
お湯をもらって洗濯もできます。

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フィールドスコープは
パキスタン人スタッフにも好評でした。
僕らの登っているところを
じっくりと観察していました。

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個人的にはBCではしっかりと食べることを心がけました。
上部キャンプではα米やフリーズドライ食品のみなので
BCの美味しい食事は本当に楽しみで、
コックのスタッフをはじめスタッフには感謝です。

上部に上がったN副隊長とSからは18時の無線交信で
C1まで行けずにデポ地の4700mで泊まるとの連絡が入りました。



2024年6月8日
  デポ地→C1→BC  N副隊長、他1名
 BC→C1  小山田、他1
BC 宮崎、他2名

一日レストを入れたことで
順化も進んだ感じになってきた気がします。
(こういう、”その気になる”、ということが実は大事で、
高所ではメンタルコントロールが重要です。
冷静に体調を観察することも大事ですが、弱気になってはいけません。)
さあ、再び頂上に向けて活動開始!!

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僕とYさんはC1に向けて出発。
今回は4~5日の行動予定で6200mのC3まで
登る計画です。
ベースキャンプではBCキーパーの宮崎さんのほか、
2名が前日に引き続きレストになりました。
ガスで視界が悪い中の出発で、
下部でややルートをロスしましたが、
1時間ほどで修正できました。
焦ってはいけないと、深呼吸して気持ちを落ち着かせます。


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上部はリッジがはっきりしているので
迷う事はあまりないです。
また今までの遠征隊が残していった
デポ旗や道しるべに積んだ石がC1まではところどころに残っていました。
ルートをロスした後は視界が悪くてもそのデポ旗を
見落とさないように進むように気を付けました。

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4900m付近でこの日、デポ地からC1にタッチして
BCに下りるN、Sペアとすれ違いました。
短くではありますが言葉を交わします。
さらにその上のケルン付近で
同じくBCに戻る
Hさん、Tさんの日本人Pともすれ違い
情報交換というかアドバイスを頂きました。
彼らはかなり先までルートを伸ばしたようで、さすがと言う感じでした。
今度は僕らが頑張る番です。

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この日は7時間ほどの行動でした。
夕方になっても天気は回復しませんでしたが、
ガスの切れから見えるスパンティークは
とても幻想的でした。


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テントの中です。
上部テントではジェットボイルの『スモー』を使いました。
1.8リットルと鍋の容量が大きいので水を作るのも便利なうえに、
サーモレギュレーターを使っているので
気温が下がっても安心して使えました。
個人的にはこの「モンベル・リゾッタ」シリーズ
お湯を入れて3分ほどで
出来るのでとても良かったです。
食欲の落ちるメンバーもいましたが、
自分はBC同様にモリモリ食べれました!

※ジェットボイルやモンベル・リゾッタシリーズについては↓を参照してください。
モンベル – アウトドア総合ブランド (montbell.jp)





2024年6月9日
C1→C2→C1 小山田、他1名
BC→C1  N副隊長、他3名
BC 宮崎
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前日同様朝からガスが立ち込め
視界があまりよくない中、C2設営を目指して出発。

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C1からは傾斜も落ちて緩やかになる分、
地形的な特徴が乏しく、
時折ホワイトアウトに近いくらいに視界がなくなると
リッジの端が見えにくくなってしまいます。
その度に少しでも視界が良くなるまで
立ち止まらなければならず、時間がかかりました。

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12時頃にッジが細くなる手前に平坦なコルがあり、
予定より手前でしたが、視界も悪かったこともあり、
そこをC2とすることにしました。
ところが、テントを設営し終わったころから
みるみると晴れてきました!
こういうことよくありますよね・・。
晴れることは良い事なんですけどね~。

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と言うわけで頂上をバックに写真撮影!
晴れると照り返しも強く、
気温も一気に上がりとても暑いです。
あっという間に日に焼けてしまいます。

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一緒に行動することの多かったYさん。
遠征隊のメンバーで最年長でしたが、
高所への順応も良く、体力的に若いメンバーに負けないほどでした。
また看護士という職業もあり、
本当に頼れる存在でした。


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C1に戻ってしばらくすると、
BCから登ってきた4人の姿が間もなく見えました!

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C1にて全員集合!
予定より少し遅れてはいるけどC1に全員上がれたことは
素直にうれしかったです。
みんないい笑顔です!


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この日は6名がC1泊なので
3張りのテントを設営。
今回の高所キャンプでのテントは
アライテント・『エアライズ3』
を使用しました。
設営のしやすさ、耐久性、居住空間、重量など
様々な点からこのテントを選びました。
特に設営のし易さは悪天候の時や高所では大きなポイントと感じました。 
3人で使う事もありましたが、
この日は二人ずつだったのでテント内も広く快適でした。


2024年6月10日
C1→C2 小山田、他1
C1→C2→C1  N副隊長、他3名
BC 宮崎

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朝から・・・

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晴れました!
スパンティーク頂上もばっちり!!
天気予報でもしばらく好天が続く予報!



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僕とYさんが先行して
昨日のトレースをたどりC2を目指します。
昨日は視界が無くて見えなかった景色もばっちり見えて
最高の天気です。
上の写真はC2に向かう途中で振り返った時の写真です。
思わず絶景で足を止めて見入ってしまいます。

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C2には昨日の半分くらい時間で到着。
だいぶ時間が早かったので
もう少し先の様子を見に行き、それからC2へ引き返しました。

その引き化し途中、
この日の朝BCを出発した別パーティの
Hさん、Tさんパーティが早くも登ってきました。
彼らは1日だけBCで休んで、もう登ってきたのです。
そして朝に行動開始してもうこの地点まで来たことになります。
さすがに早い!
彼らはもう少し進んだところでテントを張るとのことでした。
お互いの明日の行動予定などを確認し、
がんばりましょうね!などと声を掛け合いました。

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C2に戻るとN副隊長と3名がまだ残っていました。
ここで今後の予定や方針を確認し、
彼らはC1に戻り、僕とYさんはそのままC2泊となりました。
翌日はいよいよ6000mを越えてC3を作る予定です。
ルート的にも核心となる個所があり、
重要な1日になるはずです。
予報では明日も好天となっています。
それを祈りながら、この日は
早めの就寝となりました。


次回に続きます・・・。

記:白石店登山売場 小山田