スパンティーク峰(7027m)遠征報告④


こんにちは、白石店登山売場の小山田です。
今年6月に行ったスパンティーク遠征の報告、第4弾です。
①∼③は↓こちらからどうぞ!

スパンティーク峰(7027m)遠征報告① : 秀岳荘みんなのブログ!! (exblog.jp)
スパンティーク峰(7027m)遠征報告② : 秀岳荘みんなのブログ!! (exblog.jp)
スパンティーク峰(7027m)遠征報告③ : 秀岳荘みんなのブログ!! (exblog.jp)


2024年6月11日
C2→5500m付近 小山田、他1
C1→C2 N副隊長、他2名
C1→BC 1名
BC 宮崎
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この日はC3の設営が目標です。
行動時間が長くなることを予想して早めのスタート。
2時起床、周囲が明るくなりはじめた4時に出発。
朝日を浴びた
カラコルムの山々がとても綺麗です。
(写真は出発してまもなくC2方向を振り返った写真。
右奥でひと際とがっているのはハラモッシュII(6,666m)です)

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スパンティークの頂まで続くリッジは
何度見ても美しいライン。
そのリッジを雪庇に注意しながら進みます。
この日の目的は6000mを越えた地点にC3を設営する事。
テントやストーブ、シュラフも入ったザックは
重いけど、順応がうまくいっているせいか
それほど苦しい感じはしませんでした。


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1時間ほどで別パーティのHさん、Tさんのテントを通り過ぎます。
彼らも既に行動開始している様です。
僕らは彼らのトレースを辿りながら
進む形となります。


ところが・・・
しばらく行くと
大きな雪庇の崩落個所で2人のトレースが消えていました・・・
2人が滑落した可能性があることがすぐに分かりました。
BCに無線で連絡を入れ、
その後僕らは登山活動をいったん中止し、
翌6月12日、上部キャンプに上がっていたメンバー全員がBC下りました。


2024年6月12日~16日

ヘリでの捜索後、
エージェントの手配した6名程の救助隊
のサポートを行いました。
僕らだけでは救助活動はできなかったし、
救助隊だけでもそれは同じだったと思います。


2024年6月17日
BC→C2 小山田、他2名
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遭難救助活動が終了し、
残された日数やメンバーのそれぞれの気持ち、体調を考えると
葛藤はありましたが、
僕としては、まだ諦めたくない、そんな勝手な思いで
Yさん、S、と共にBCを出ました。

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上部にはまだテントやガス、食料も
荷揚げしたままだったので、ザックは軽く、
C2まで一気にあがりました。


ところが、夕方から天候は崩れ始め、
遠征中でも一番の荒れ模様となってしまいました。
湿った雪が深々と降り積もる状況、
気温が高いせいか、周囲からは一晩中、頻繁に雪崩の音が聞こえました。


2024年6月18日
C2 小山田、他2名
BC、宮崎、他3名

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一晩中降った雪は朝になって小降りになったものの、
視界は悪くこの日の行動は断念せざるを得ない状況。
また、この大雪により
雪崩の危険性が高まり、
雪が落ち着くまで少なくとも明日も行動は難しいのは明らかでした。
また天気予報も
今後は崩れやす天候が続きそうとのことでした。

C2に一緒にいるYさん、S君、
そしてBCとの無線を通して話し合いを行った結果、
残念ながら
残りの日数を考えると
僕らの登山はここまで、という事なりました。

写真はこの日の夕方、少し天気が落ち着いたので
Hさん、Tさんの最終キャンプ地まで登った際の写真です。
既にテントは救助活動の際に撤収済みで、
テントの跡だけが残っていました。




2024年6月19日
C2→BC 小山田、他2名 
BC 宮崎、他3名

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C2に残っていたすべての装備を
背負い、BCへ向けて下山。
ロープ、テント、ストーブ、食料、スノーバー・・・。
遠征中で一番重かったです。

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重いザックにペースは上がらず、
苦しい下山でしたが、C1付近まで
N副隊長ともう一人のメンバーが上がってきてくれて、
荷物を持ってくれました。
このヘルプは本当にありがたかったです。

何度も登り、下ったBCまでのルート、
もう辿ることはないんだなと思うと
いろいろな感情が湧いてきて
気づくと泣いていました。


2021年6月20・21日
BC待機

ポーターの手配の関係でBCにて
二日間待機となりました。
時間があるのでゆっくりと撤収準備をするとともに、
持ってきた日本食を
パキスタン人スタッフに振舞ったり、
のんびり読書したりと
BCでの最後の二日間をおのおの過ごしました・・・。

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余ったα米・『モンベル・白ご飯』で作ったおにぎり
おにぎり自体は好評でしたが、
具として添えた海苔の佃煮は微妙な反応でした。


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お餅と餡があったのでお汁粉も
作りました。
こちらの方が好評だったと思います。

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最後は全員でBC周辺のゴミを拾いました。
パキスタン人スタッフも合わせて10名を越える
人間が20日間も生活をしていれば
かなりのゴミが出てしまいます。
ヒマラヤでのごみ問題
エベレストなどでも大きな問題になっていますが、
かなり深刻な状況なんだと改めて感じました。
このスパンティークのBCでも実際に以前の遠征隊の
ゴミがかなり目立ちました。



6月22日~24日
帰路キャラバン BC→アランドゥ→チュトロン

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撤収の朝、BCにアランドゥから
ポーター達が到着しました!
その数、35名程。往路は60人以上いたのでそれに比べるとだいぶ少ないです。

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往路でも来てくれていたアランドゥ村の村長が
荷物をしっかりと計って
ポーター一人一人に振り分けてくれました。


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暮らし慣れたBCとの別れ。
いつまでもここにいたい、そう思ってしまうほど
素晴らしい景色が見れる素敵なベースキャンプでした。
また、ここにいつか来ることがあるのかな・・
そんなことを思いながら後にしました。

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氷河上はクレバスが開いている箇所が多く、
短時間ではありますがロープをつけて歩きました。

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帰りもロバは大活躍してくれました。
バランスよく荷物を括り付けるのが
なかなか大変そうでした。

ちなみにキャラバン中では
ロバやポーターに背負われることの多かったダッフルバックの
シンキングロック・『エクスペディションバック90L』
はシンプルなつくりですが、とにかく耐久性が良いうえに防水性も高く、
1か月に及ぶ遠征で荒い扱いを受けたギアですが
壊れることもなく安心して使うことが出来ました。


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のんびりと歩きます。
何気ない風景も日本に帰れば見ることのできないもの。
キャラバン中も素晴らしい風景の連続でした。

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次第に遠くなるスパティーク・・・。
帰路のキャラバンでは曇っていることが多く
山頂付近はほとんど見ることが出来ませんでした。


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キャラバン最後のキャンプ地。
景色もよく、日当たりも良くて、良いところでした。
N副隊長は半裸で水浴びしてすっきりしていました。



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アランドゥまで戻ってきました・・・。
もうザックをもって歩くのも終わりです。
1か月も経っていないのに
このアランドゥから出発したのがはるか昔のような気がしました・・。

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アランドゥでポーター達とお別れし、
ぼくらは車に乗り換えてアランドゥには泊まらず
もう少し進むことになりました。

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アランドゥから3時間ほど車で進み、
温泉が湧いているチュトロンという集落で泊まりました。
一応「Rest House」と宿泊施設でしたが、
その中庭で僕らは最後のテント泊となりました。

そして、地元の人も入る温泉は
湯船の中で体を洗う人、泳ぐ人、服を洗う人、
皿を洗う人(!)、靴を洗う人(!!!)など様々で、日本では
ありえない温泉スタイルを体験しました・・・。
(写真が撮れなかったのが残念です。)


2024年6月25日~26日
チュトロン→スカルドゥ
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いよいよ街に戻る日です。
道路も悪路から・・・

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舗装のしている道となり、
車も多くなり、
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こんなところを通り過ぎ、

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スカルドゥに戻ってきました。
なんだかほっとする風景です。
そして久しぶりのベット・・・。
戻ってきた日はグッスリと寝ました。

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翌日はスカルドゥで一日過ごしました。
お腹を壊さないかドキドキしながら
露店のフルーツ屋さんで搾りたてのジュースを飲んだり、

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ローカルレスランで食事したり、
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お土産を買ったり・・・。

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エージェントの事務所で日本に送る荷物の
発送作業などをしました。

重さを計り、梱包し、内容物のリストを作り
合計13個の荷物、200キロの荷物を発送しました。
(なかなか高い送料でした・・・)

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遠征中お世話になった
パキスタン人スタッフとちょっとおしゃれな
レストランでお食事もしました。
1か月近く共に過ごした彼らともお別れです。
またいつかの遠征で再会したいものです。


2024年6月27日~29日
スカルドゥ→イスラマバード→日本・成田空港→新千歳空港
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最後にイスラマバードで
パキスタンの民族衣装である「シャワールカミーズ」
を自分用に買ってしまいました~。
イスラマバードでも一泊したのち
帰国の途につきました。
こうして1か月に及ぶ遠征が終わりましった。
このような長期間の遠征を行うことが出来たのも
メンバー1人1人の家族、職場の仲間、友人など多くの
方々のご理解と応援のお陰です。
本当にありがとうございました。

多くの事があり、
悩み、悲しみ、悔しい思いもしましたが、
貴重な経験をした遠征でした。
これを必ず次の挑戦につなげていきたいと思います。
記 白石店登山売場
小山田
(番外編に続きます。)