(今更ながら)冬のオプタテシケ山 其の弐

前回までのお話はコチラ↓

(今更ながら)冬のオプタテシケ山 其の壱

2日目、早朝に起きて身支度を済ませ、中央稜の取り付きへ出発。

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中央稜基部へ

しかし、ここ2日程で降り積もった新雪と&下のクラストに埋まった這松の落とし穴で

ズブズブ埋まって中々進めない…

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蟻地獄状態の尾根は遅々として進まず、A壁取付き着は2時間位遅れてしまった。

漸く取付きに着いてここでロープを結び登攀開始。トップは私が行く事になった。

見上げると厚く堆積して固く発達した雪氷が岩を覆い、露岩は全く見られない。

素人目には岩より雪の方が楽そうに感じるかもしれないけど、

脆い雪にはプロテクション(ハーケン、カムなどで安全確保する支点)が取れず

アックスやアイゼンの前爪も利かなくて、とっても危うくて怖いのだ。

仕方なく今回は時短の為、簡単なB壁を登攀する事にした。

それでも5、60cm程堆積した雪氷の奥から露岩を掘り出して

ワードホッグやカムの打てそうなリス(岩の隙間)や凍土を探し、

プロテクションを取ったら一歩攀ってまた雪掘り…の繰り返し。芋虫みたいに進んでいく。

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やっとリッジに抜けたかと思ったら、今度は腰まで埋まるラッセルの急登にヒィヒィ…

その間にも微妙な雪壁が幾つか出て来る度に歩みが止まる。

この日は昼頃までは晴天予報で、登っている最中は絶景!


右の眼下に見えるシュートも思ったよりも広く快適そうなので、気持ちは早るが中々スイスイ進めない。

昼過ぎ、我々が藻搔いてると、南西から徐々に雲が湧いて晴れ/曇りを繰り返すようになってきた。

風も出て来てちょっと雲行きが怪しいぞ…

焦る気持ちを抑えながら可能な限りペースを上げる。ゼイゼイと息が上がる…くっそ〜体力無いなぁ。

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山頂に着いたのは15:30過ぎ。昼には登頂予定だったので3時間半以上のロス。

しかもこの頃には雲と一緒に湧いたガスが立ち込めて、視界も利かなくなって来ていた。

「この視界じゃシュートは無理だな」

相棒とそう話して、今回は西尾根へ降り、安全にそこを滑って戻る事にした。

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とりあえず記念撮影

A壁の登攀もシュート滑走も叶わず、何も成し遂げられなかった無力感に包まれたが、ボーッとしてる暇も無い。

下山を開始する頃にはもう辺りは真っ白…細い頂上稜線はシートラのままGPSを頼りに下る。

ここが多分西尾根の下り始め…という所で登山道と別れてスキーを履いて滑り始めた。

スキーを履けば下りは早い…と思っていたのは甘く、

もはや鼻をつままれても分からないようなホワイトアウトになった斜面は、

横滑りでジリジリ降りることしかできなくなっていた。

平衡感覚が無く止まってるのか滑ってるのかすら分からず、酔って吐きそうになる。

これじゃ歩いて降りるのと大して変わらない…

陽も暮れてきて辺りも薄暗くなってきた上、吹雪まで加わってきた。

正に泣きっ面に蜂って奴だ。

何度もルートをベベツ岳側の沢へ迷いこみそうになりながら、

やっとテン場に着いたのは19時。辺りはすっかり暗くなってしまった。

これから撤収して長〜い下山を思うとウンザリする。

「ここにもう一泊して明日ここから出勤しようかな」

なんて冗談も頭をよぎったが、思い直して撤収作業に入る。

吹雪が強くなって、広げた装備がみるみる雪に埋まっていくので、紛失しないように気を配った。

ずっしりと重いザックを背負って真っ暗闇の中を下山開始。

ヘッデンで照らされた範囲の視界を頼りに慎重に慎重に滑るが…。

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重いザックに振り回されて2度ほど転倒する。転倒すると一旦ザックを下さないと重くて立てない…

考えたら、スキーだってまともに滑ったのは昨晩の夕焼けライドくらいじゃないのか…?

斜度が無くなってからは、延々と続く林道を嫌気が差しながら心を”無”にして歩く。

やっと車に辿り着いたのは22時過ぎだった。

結局、振り返ると今回達成できたのは”中央稜からの登頂”くらいしかなかったけれど、

中々濃い山行となりました。案外こういう方が記憶に残るんだよね〜

…とかなんとか強がってみましたけれど、

結局自分達の要領の悪さとスキル不足も実感したのでした(汗)。

クライミングと切り離して、今度はあのシュートを滑るべくリベンジをしたいなぁ。

今回、割と不毛な山行にお付き合い頂いたN氏に多大な感謝。

文責:白石店スキー/カヌー売場 K