結果SEA to SUMMIT & RIDE 〜利尻山アフトロマナイ沢滑走

滑り手の端くれならば一度は滑ってみたいと思っていたラインの一つ、利尻山アフトロマナイ沢。
天候と休みのタイミングが合って、降って沸いた様にその機会が訪れた。

オロロンラインをひたすら北上し、海上に蜃気楼の様に浮かび上がる利尻が現れると、嫌が上にも気分が昂る。

稚内で相方のモッチーと合流し、買出しを済ませてフェリーへ。初日は楽々の移動のみなので、14時出航便に乗船。
港に降り立つと真っ白な利尻山がお出迎え。平日の午後の為か?島は閑散として、何となくゆったりしている。
我々もテン場の北麓野営場へゆったり行こうか〜と、タクシー会社へTELすると...「スキー/ボードがあると乗れません」との事!...なぬ〜!いきなり予定外のハプニングだ。さてどうしよう...?
結局、万策尽きて徒歩で野営場まで約4kmのアルバイト...
しかもザックには、降ろし忘れたペットボトル5本+水分の計約7リットルも入ったまま。

野営場までは長〜い上り坂が続く。今日は殆ど歩く予定じゃ無かったので荷造りも適当、担ぎにくい重荷がこたえる...

[テン場に着くとそそくさと食事を済ませ就寝…おやすみなさい]

翌朝、支度を済ませて4時にテン場を出発。ヘッデンで歩くが、直ぐに空が白んで来る...陽が長くなったなぁ。

[静かな森を歩く]

[c405付近より北尾根/長官山方面]

日中の日差しで緩んだ雪は、夜間の放射冷却で冷えて固く閉まっていた。
長官山への尾根へ伸びる沢筋へ取り付いてから、徐々に斜度が急になる。
スプリットボードの相方は固い雪のためにハイクに手間取り、早々にアイゼンを履き、シートラ(板を担ぐ)を決め込んだ。
私は試してみたかったSKEATSのGlideを装着。短い爪だが固い雪によく噛み、思いの外サクサク登って行く。

■便利ギア紹介■

①SKEATS Glide

Clowsに比べて爪が短いけれど、爪の厚みがあるので、雪を引っ掻きスリップする事が少なく良く効きました。
サイドの爪が無いのでトラバースは苦手ですが、固い雪なら直登は結構いけそう〜何よりClowsより軽くてコンパクト!
SKEATSはスキーアイゼンよりコンパクトですが、素材がステンレスなのでClowsはやや重く、
春の湿雪では雪ダンゴも付き易いので「スキーアイゼンでいいか」と思っていましたが、
軽量コンパクトなGlideならスキーアイゼンと使い分け、お守り代わりに気軽に持っていけるなぁという印象でした。

スプリットボーダーはおそらくClowsの方が良いのではないかと思いますが、
今春、Glide用の強化アタッチメントも出る様なので、スキーヤーはGlideも良い選択かもしれませんよ。


[長官山への稜線に上がると、朝日が眩しく視界に入ってきた]
長官山の避難小屋に着いて時計を見ると、予定より時間が早い。
(あんまり早い時間に登ると滑る斜面の雪が固そうなので)、避難小屋で少し時間を潰そうという事になった。
扉が少し開いてたらしく、隙間から雪が入り込み中々開かなかったので、雪掻きで一汗かいて中へ入る。
外に居ると風で体が冷える(利尻にしては微風だが)ので、小屋内で1時間弱暖を取ってから、再び歩き始めた。

[眼下には紺碧の海に浮かぶ礼文島]
[北峰山頂への急登を見上げて再び登り始める]
硬く締まった雪で、快適にサクサク進むことが出来て順調に高度を稼ぎ、
AM9:30過ぎには北峰山頂に着いた。うーんちょっとまだ時間が早いぞ。
予報通り風も弱まってきたので、もう少し雪が緩んでくれる事を期待して山頂で待つ事にした。

[ゆっくりパンを頬張りながら、360度の山頂の大パノラマを堪能]
それにしても、素晴らしい大パノラマだ。これだけでも今日は本当に登った価値があるなぁと思った。
360度、海に囲まれたこんな独立峰って一体、世界のどこか他にあるのだろうか...?

北峰には祠があるのだが、完全にエビの尻尾に覆われていて見えなくなっていた。
相方のモッチーが掘り返すとほんの少し祠の一部分が見えたので、滑走の無事を祈って2人で手を合わせた。

[ピッケルで掘り出すモッチー]

[祠かな?]

[お疲れさま〜]

利尻らしからぬ快適な山頂でついつい長居するが?時間潰しもそこそこにして、滑走ポイントをチェックしに行く。
地図で見ると、通常の北峰直下からと、南峰側へリッジを一つ乗越した先のコルからと、2カ所がいけそうだ。

まず北峰直下を覗いてみる。50度位ありそうに見える斜面が、先で更にノール状に斜度を増して落ち込み、両側が門の様な岩壁に挟まれたシュートに吸い込まれて行く...動画サイトで見てはいたが、実際に目にすると想像よりかなり急だなぁ。
シュートの入り口は完全にブラインドで、崖っぽいのかよくわからない。動画では右から巻けば大丈夫な筈だけど...。
それよりも斜面の雪がハードなモナカで、その先のノールは日陰なので多分もっと固いはず。

もし最初のモナカで足を取られてコケたら、カリッカリのノールからシュートに滑落して行くのか...あぁコワい💦

なので一応、コル側の斜面も見に行く事にする。トラバース斜面は陽が当たって少し緩み、キックステップが効いた。
[南峰とのコルへ向かってトラバース]

コル側の斜面に着くと、こちらは幾分広くて滑り出しの斜度も緩いせいか?
日差しが直行して当たって、雪も多少は柔らかい様に見えた。
反面こちらはノールの先で大きく左へ屈曲して、その先の様子は上からは窺い知れない。

どっちを滑ろうか悩んだが、やっぱりダイレクトな北峰直下を滑ろうという事になり、再びそちらへ戻る。
[ファーストドロップする相方のモッチー]
滑走の支度をして、相方がファーストでドロップ...が、ノール手前で暫く下を覗き込んだ後、一度座った。
無線で「思ったよりもカリッカリで、ボードだとこの急斜面をシュートに入って行くのは厳しそう」とのコール。
ピッケルで自己確保して何とかアイゼンを履けたので、一旦登り返してコル側の斜面へ移動する事になった。
”スキーなら何とか行けるか...?”とも一瞬思ったが、先に移動して相方を待つ事にする。

コル側のこちらの斜面は滑り出しこそ少し緩いけど、ノールの先で左にカーブした先がどうなってるのか?
動画などの事前情報も無いので、地図で想像する以外は分からない。

[今度は先に私がファーストでドロップ...した途端、バックルの締め忘れに気づき、すぐ停まる(笑)]
滑り出しこそさっきよりマシだが、柔らかい分、陽の当たった斜面のモナカがスキーの下で崩れてスラフになり、
ザラザラと川の様な流れになって、ノールから先の狭くなった急なシュートへ落ちていった。
その上に乗る様な感じになって、右に左にターン...というより向きを変える感じになって一緒に落ちていく。
シュート地形に入ると、漏斗状にスラフが集まって厚くなってきて足元をすくわれそうになったので、
”転んじゃイカン”と思って、つい左へ寄って一旦止まりスラフをやり過ごした「止まっちゃった...」

振り返って見上げると、首が痛くなる様な角度の先に、真っ青な空が見える...もーコッチもすごい急じゃないかぁ。
[振り返って見上げると、見えるのは頭上の空]
その後、再び小さなスラフと一緒に流れてやっとシュートの外に出ると、
漸く40度位?の普通の広い急斜面になったので、少しマトモなターン孤を描いて滑れるようになった。
岩陰に隠れられそうな安全な所を見つけると一旦停まり、上で待つモッチーに状況を無線で入れる。

暫くするとモッチーも無事に滑り降りてきた。とりあえず一番の核心部を無事滑る事ができてホッとする。
噴き出たアドレナリンを諌める様に、2人とも無言で滑った斜面を見上げた...。
[よく滑ってこれたなぁ...(多分こんな感じかな...? 間違えてたらゴメンなさい)]
最大の核心は終えたけれど、標高差にして残り約1200mほどある斜面が、まだ延々と続く。
上で感覚が麻痺しちゃったけれど、再び滑り出すとまだ35〜40度近くあるんじゃ?という様な急斜面だと分かる。
更に両側の東北稜・東稜からの全層雪崩の影響で土砂と無数の小石が散らばって、さながら斜面は地雷源。
避けて通るのは到底無理なので、諦めて其の中を突っ切って滑っていく。「あぁ...板がギタギタになるなぁ」

地雷源を抜けて斜度が緩くなると右岸の林道に合流。雪はストップ気味だが、幸い海岸の道路まで繋がっていて、
一番下までスキーを外して歩く事なく滑り切って、外周の道路へ下山することができた。

「あぁ、何とか滑り切った...」そんな安堵と、上手く滑れなかった悔しさでちょっぴり葛藤する...

道路脇で支度を解いて、ノンビリとバスを待った...さっきまでの緊張感はどこへやら?長閑な春の陽気に気も緩み、
「あ、昨日ターミナルから歩いたから、結果的にSEA to SUMMIT (to SEA)か...」なんて事をふと思った。

[バスが来るまで30分程まったり]

     [手を挙げたら停まってくれる]

[海岸線から滑った斜面を振り返って余韻に浸る]
利尻富士温泉のバス停で下車すると再びエッチラオッチラ坂を登り、ポン山散策路からはシールで北麓野営場まで戻った。
テン場ではノンビリと濡れ物を干したり夕食を食べたりして過ごし、日没と共にシュラフに潜り込むとグッスリ眠った。

翌朝、テン場を撤収してターミナルまで再び4km歩くが、行きよりは荷物も軽く、ずっと下りなので快適。

9:00出港フェリーに乗り込むと、相方と外の後方デッキで、名残惜しむ様に遠ざかる利尻を眺め続けた...

[帰りのフェリーの方が立派でした]

[ありがとう利尻]

島ではロクな物を食べてなかったので、稚内に着いたらまずは腹ごしらえ。
大食いの相方がチェックしていた”ボリューム亭”

[これがボリューム亭かぁ]

[ハンバーグ美味しかったです]

腹ごしらえしたら、次は当然お風呂。3日間の疲れと汚れを落とすべく、南下して"豊富温泉"へ。
[独特の油分の浮いたお湯が身体に優しく染み渡りました〜]
身体がサッパリしたら、次は当然?スイーツ?(大食い+スイーツ男子の相方曰く)

[豊富町の”FERME”]

[2019北海道ソフトクリームグランプリ受賞のソフトは絶品!]

三日間の質素な生活から解放され、オジサン2人でプチ観光三昧?...

滑りの方は少し悔いが残る結果でしたが、まぁ自分の実力なら怪我せず降りられただけでも上出来かもしれません。
それでもまた機会があったら....リベンジしに行きたいな〜

長文駄文に最後までお付き合い下さいまして、誠にありがとうございます。
残りの滑りシーズンも、皆さんお怪我なく楽しくお過ごし下さい。へば!

文責:白石店スキー売場/K山