ジョン・ミューア・トレイル(JMT)スルーハイキングレポート #3

白石店ウェア売り場の小林です。
2025年9月にアメリカのロングトレイル、ジョン・ミューア・トレイル(JMT)をスルーハイクしたレポートの第3弾。前回はヨセミテ ~ トゥオルミーメドウズ ~ レッズメドウの4日間をお送りしましたが、今回は初のリサプライ(補給)で街へ下ります。

Day 5

朝、目覚めてテントから湖を眺めると、蒸気霧(北海道では気嵐?)で幻想的な景色。標高は高くなかったんですが、水辺の近くでとても冷え込みました。朝食を手短に済ませ、レッズメドウに向かいます。

レッズメドウはちょっとした観光リゾート地になっており、途中で国定記念物のデビルズ・ポストパイル Devils Postpile に立ち寄り。いわゆる玄武岩の柱状節理。とても珍しいものなんですが、今までに沢山の日本では見られない景色を見ていて感覚が麻痺しているのか、似たような豊岡の玄武洞公園に行ったことがあるからか、あまり感動はしませんでした。

レッズメドウに到着。ここにも売店があり、ハンバーガーショップ、シャワールームなどがあります。ここでもリサプライは可能ですが、売店は商品数も少なく、料金も街より高めなので、時間がないなどの理由がなければ街まで降りるのをおすすめします。まもなくしてバスが到着。

バスに小一時間ほど揺られて、マンモスレイクスのダウンタウンに到着。到着して間もなく雨が降り出しましたが、山で降られなくて良かったです。マンモスレイクスは、カリフォルニア有数のスキーリゾート地として知られ、グリーンシーズンにはサイクリングスポーツが盛んな街としても有名です。実際、到着した日にはロードバイクレースが開催されており、マウンテンバイクをスキー場まで運べる無料シャトルバスが30分おきに運行されるなど、サイクリストにとって非常に充実した環境が整っていることを実感しました。

今晩宿泊するドミトリー Holiday Haus 。建物内にハイカーズボックス(ハイカーが不要になった食料、燃料や道具をシェアする箱)があったり、ハイカーフレンドリーな宿。チェックインまで時間があるので最寄りのランドロマット(コインランドリーは和製英語なので通じません)で着ていたウェアを洗います。当然、洗い替えの服は持っていないので、洗っている間は全裸にレインウェア上下を着て過ごすというのが、ロングトレイルハイカーのお決まりスタイル。初の感想は不快感と落ち着かなさが半端ないです。

初めてのアメリカでの洗濯機の操作に手間取っていたら、気さくなおじさんが話しかけてきて使い方を教えてくれました。さらに洗剤は別で購入が必要なんですが、それも沢山持ってるからということで頂きました。「俺も昔にJMTを歩いたよ!俺のバックパックはお前のよりもっと大きかったぞ、お前のは俺の日帰りサイズだ!ガハハハ!」みたいな感じの会話をして去っていきました。香り強めのアメリカの洗剤で綺麗になったウェアに着替えて、次は食料の買い出しに。

バス(マンモスレイクスの路面バスは全ての線がなんと無料)に乗って向かったのはVONSというスーパーマーケット。カルフォルニアのイオンみたいな感じで、激安ではないが品揃え充実の大規模店舗。お昼ご飯に本場のお寿司、カルフォルニアロールを購入。しばらくお米を食べていなかったので、とても美味しかったです。
あとは山で食べる食料を購入。ロングトレイルで食べるものは軽くて嵩張らない、高カロリー、保存がきく、早く食べられるものということで、インスタントラーメンを食べることが多いです。僕はこのラーメンに、フリーズドライの野菜、レトルトパウチのツナ、マッシュポテトの粉、ビーフジャーキーやサマーソーセージなどを入れて食べていました。
アメリカのインスタントラーメンは日本のメーカーのものが主流で、写真のものは Maruchan 丸ちゃん。他には日清、サッポロ一番もありました。味は日本には無いものばかりで、この他にはチリソースなんてものも。味は日本のものに比べて数段落ちますが、値段は1つ1ドルぐらいなので有り難いです。
その他、さまざまな行動食、普段あまり食べられない果物、生野菜、乳製品などを購入して宿に戻りました。

戻ってからはシャワーで汚れに汚れた体を綺麗にして、久々のベッドでぐっすり就寝。

Day 6

起床。これからまたしばらくシャワーはお預けになるので、朝にもう一度浴びてからホテルを後にしました。MTBを山まで運ぶシャトルバスに乗って山の方へ戻ります。

スキー場に到着。マンモスレイクスのモニュメント、大きなマンモス。皆、ここからMTBをゴンドラに乗せてダウンヒルを楽しむみたいです。ここからシャトルバスに乗りJMTのレッズメドウに戻ります。


レッズメドウに帰ってきました。歩く前の腹ごしらえにハンバーガー・ショップでランチ。外で食べていたらミツバチがハンバーガーに群がってきたので、写真を撮るどころじゃなくなって大急ぎで完食。もう少し味わいたかったが美味しかったです。
食後に水を補給したりパッキングの整理など準備をしていたら、トムというハイカーが話しかけてきました。彼は地元のハイカーで、歩き終えて迎えの奥さんの車を待っているとのこと。彼もULハイカーでお互いのバックパックの重さを比べたり、装備の話などをして過ごしました。本場アメリカのULハイカーと話すのは初めてでしたが、重いだの軽いだの話す内容は日本とあまり変わりませんでした。

第2ラウンドの開始です。街で身体も綺麗になり、新たな気持ちで歩き始めます。リフレッシュしたので、足取り軽くといきたいところですが、また七日分の食料を補給したのでバックパックが重い。昼からの行動なので数マイルだけ歩いて寝床を探して終了です。

Day 7~ 9

第二のリサプライポイント(補給場所)のヴァーミリオンバレイリゾート Vermillion Valley ResortことVVRを目指して歩きます。第一のマンモスレイクスからは50キロぐらいしか離れていないので、ここでの補給は必須では無いのですが、VVRはハイカーが集まるリゾート地でレストランや焚き火を囲んでのキャンプ、シャワー、ランドリーも備わった楽園のような場所。JMTを歩くなら絶対に行きたいと思っていたので、期待を膨らませながら歩きます。

VVRに向かう途中に出会ったハイカーから、「今シーズンのVVRの営業は終わったよ」という衝撃の内容を告げられました。ビールを飲んだり、ハンバーガー食べたりとか、いろんなことを考えて歩いてたのに全て消えました。食料にはまだ余裕があるので、第三のリサプライポイントのミューアトレイルランチ Muir Trail Ranch ことMTRに気持ちを切り替えて歩きます。

ご覧のようにJMTは水がとても豊富です。もちろん浄水器は必要ですが、予備の水を運ぶ必要はほぼありません。

使用した浄水器はPlatypus クイックドローマイクロフィルター
使用頻度がとにかく多いので、手軽に短時間で浄水できることが重要。
これを700mlのペットボトルに付けたままバックパックのサイドポケットに入れて、いつでも浄水できるようにしていました。クリーニング方法も簡単で、浄水スピードはSawyerより早い。Katadynの方が早いですが、ペットボトルに付けられないので却下。ペットボトルはすぐに手に入って軽量なので便利です。

MTRへの案内が出ました、あと少しです。アクセスしやすい補給場所はここが最後になります。

MTRに到着が、まさかのクローズ。まさに呆然と立ち尽くしました。
どうやら到着の前日に終了し、スタッフの方が片付けをしていました。
かろうじてコンセントと水道は使えたので、電子機器の充電と簡単な洗濯など出来ることをしながら、今後のプランを考えます。最寄りの町のビショップ Bishopに降りるには、ここから1日かけて峠をこえて、翌日にヒッチハイクの行程。往復で約4日間のロス、ゴールに間に合わない可能性が出てきます。
残りの食糧は約5日間分、ここからゴールまでは7週間から10日程で、天候不良で停滞にでもなれば絶望的です。


途方に暮れていると地元のハイカー、マイク&マイクが登場。
近くのホットスプリング(野湯)でゆっくり過ごしていたとのこと。
食料が補給出来なくて困っていると話したところ、片付けをしていたMTRのスタッフに「コイツは食料が足りなくて困ってる、食料を分けてくれ」と交渉してくれました。スタッフは渋々でしたが「クレイジーなハイカーだ」と捨て台詞を吐いて、食料がたくさん入ったバケツを5つぐらい出してくれました。


このバケツに入った食料はハイカーが補給のために前もって郵送でMTRに送り、タイミングが合わずに受け取れなかったり不要になったりしたもので、テイクフリーで提供されています。中には食べられなくなったものもあるので、厳選して食料を無事に確保。買うと良い値段なので嬉しい大量のエナジーバー、普段は絶対に食べない激辛ラーメンですが贅沢は言えません。

食料補給を終えて一息つきたかったので、マイクにホットスプリングの場所を尋ねたら、分かりにくいからということで案内をしてもらえることに。
実際にとても分かりにくい場所で、道中の川を一緒に渡渉してくれたりとても親切にしてもらいました。目当てのホットスプリングは37、8度ぐらいのぬるま湯で綺麗なところでは無かったですが、とても気持ちが良く疲れが癒えました。
MTRに戻ったあともマイクと「トランプ大統領についてどう思う?」といった答え難い話をしたり、絶望していたMTRが彼のおかげでとても楽しくて思い出深い場所になりました。ありがとう、マイク。

マイクに別れを告げてMTRを後にし、数キロ先のキャンプサイトで一晩過ごします。この日は時間に余裕があったので、テントを先に張りキャンプサイトから少し離れた川で夕食にします。早速、MTRで手に入れたミートソースパスタを食べます。買えば2千円ぐらいするのでありがたい。アメリカンなボリュームと味で食べ応えがあって美味しかったです。その後は道中で出会った日本人夫婦とキャンプサイトが一緒になったので、暗くなるまで話をして就寝。

Day 10 〜 11

相変わらずカラッと晴れた良い天気の日が続きます。9月中旬はもう秋の模様で、数日すれば雪も降り出します。全行程の半分を過ぎて、次は今JMTを象徴する建造物 ミューア・ハットのあるミューアパス Miur Pass (標高3650m)に向かいます。

標高を上げます。目に入る山がどれも格好良い。

これまでずっと良い天気が続いていましたが、ついに雨が降ってきました。

ミューアパス最上部にあるミューア・ハットに到着。
風が強いので中で小休憩をします。

ミューアハットは歴史的な石造りの避難小屋。19世紀のイタリヤの伝統的な石積み小屋からインスピレーションを得た八角形のドーム型構造で、屋根の積み上げがすごい。中にはノートが置いてあり、訪れた人々が記念に記入していました。アルゼンチンから来たというハイカー2名が先客にいたので少し会話。サッカー強いぐらいしかアルゼンチンの知識が乏しい自分に比べ、相手は「日本に行ったことある、サッポロビール最高に美味い」とか話してて、なんだか少し申し訳ない気持ちになりました。

雨が少し強くなってきたので急いでパスを下ります。途中、キャンプサイトで出会った日本人夫婦とすれ違いました。この後も道中、何度かすれ違うたびに話をして一息ついたり、天気の情報を教えてくれたりと、ソロハイカーの自分にはとてもありがたい存在でした。

雨が止む気配がないので今日の行動は終わり。雨が凌そうな木の下にテントを張ります。今回、Garminのインリーチを用意しなかったのですが、天気予報が分からずとても不便な思いをしました。スマートフォンの電波が届かないところに長期間いるような山行には必要だと実感しました。

明日は急な崖沿いに100段以上の岩のスイッチバックが続く「ゴールデン・ステアケース(黄金の階段)」と呼ばれる難所がある Mather Pass マザーパス(標高3,678m) を越えるので、雨が止んでくれることを祈りつつ就寝。

続く