硫黄沢遡行〜ウブシノッタ川下降
知床の山と海を繋ぐ沢旅

北大店登山売り場、双樹です。


8月17日、18日で知床へ沢登りに行ってきました。
1日目、カムイワッカ湯の滝を歩きだし、すこし林道を歩いた知床大橋から硫黄沢に入渓。沢を登って硫黄山を目指します。
2日目は硫黄山と知円別岳の間の稜線からウブシノッタ川を下降し、オホーツク海まで下ります。

初日は硫黄山の登山口の先にある知床大橋から入渓します。

前夜、仕事が終わってから下道を走ること7時間30分。
途中で仮眠も取り、歩き出しは朝の7時でした。
うっかりカムイワッカ湯の滝の駐車場に駐車してしまいましたが、今は少し先の硫黄山登山口にも駐車できます。

知床林道を歩いて25分ほどで知床大橋に到着。橋から地形をしっかり観察。右岸(上流から見て右手)から歩いて川床まで下りられました。

川床から見上げた知床大橋。けっこうな高さです。

歩き始めは気持ちの良い森の中。ヒグマの気配を探しながら歩きます。

右岸から流れ込む枝沢も立派な滝。
どこを見ても切り立っています。

遡行開始1時間で第一の核心、三段の滝。
一段目は溶岩が作ったのか不思議な紋様の壁です。
ここは右岸側から巻き気味に・・

二段目は直登。今回は2人ともラバーソールの沢靴で行きましたがフリクションはバッチリ!!
しかし、ホールドが乏しく悪い部分もあったのでロープを出しておけば良かったと要反省です。

二段目上から振り返ると青いオホーツク海が見えます。

三段目。抜け口の手前でハーケンでプロテクションを取れました。
最後の一段はホールドもスタンスも藻で覆われていたので、掃除しながらのクライミング。
記録によると左岸側も登れるらしいです。

標高460mで現れるハングの滝。左岸側を高巻き。

すぐに出てくる次の滝。泉リード。
灌木にスリングをタイオフしてプロテクションを確保。
抜け口でスタンスが無くて緊張しましたが、キャメロットの0.5番が決まりました。

滝を抜けると灌木の中の枯れ沢を進みます。日陰がありがたいです。

枯れ沢を塞ぐように正面に現れる岩壁。
もはや滝とは呼べず、ただの壁です。
雪解けの時期だけは水が流れているのでしょう。素直に流心を行くなら赤矢印のライン。
つるっとしたスラブを登るのか、うまくクラックを繋ぐのか・・・
どちらにせよクライミングシューズが欲しいレベル。
どこか安全に登れるラインがないかと右往左往。

左岸側にクラックが繋がる場所を発見!!
ここならなんとか行けるかな?とトライ開始。

念の為持ってきたカムやナッツがここで活躍。
泉がギアを運ぶのに使っているのが
GROMMET/グロメット MinimalGearSling
重量43gと超軽量。パッド等を省きシンプル軽量を突き詰めたギアスリングです。
ここにギアをラッキングした状態でバックパックに収めておけば、登攀→撤収→歩きがスムーズに行えます。

クラックに足が入らん‼️
フェースもツルツルで立てない‼️
と苦戦しながら四連アブミでなんとか突破〜。

ザックは吊り上げ。
水も入れて15kg近いザックは2対1の倍力システムで引き上げます。

標高830mでどう見ても登れなさそうな壁。
ここは右岸から高巻き。

890mの滝ここは岩が苔むしてやたらと滑る‼︎
地味ながら、フリーで登るのが1番難しかった場所でした。

この後も壁はありましたが、さほど難しくはなく。
16時30分にようやく登山道に合流。
まだ山の中腹ですが、もう気分はゴールテープ!!
入渓からおよそ9時間。
それなりに難しくクセのある滝の突破に時間がかかりました。
登攀力のあるパーティなら大幅な時間短縮は可能だと思います。

夏道に出てもここは硫黄山。
ほぼ自然地形のままの沢を登っていきます。
しかし、これまでとは歩きやすさは段違い。

グイグイ進んで、1時間30分ほどで硫黄山の頂上直下まで。

夕日を浴び、赤く染まる岩峰。


振り返ると硫黄山の向こうに夕陽が沈む。
今回は時間が足りなかったので硫黄山ピークはパスしました。

暗くなる前に着きたい!!
第1火口キャンプ指定地へ下ります。
続く稜線の先には羅臼岳。マジックアワーの色が美しいです。

夜は貸切の第一火口でツェルト泊。
ツェルトの口を開けて星空を眺めながら眠りにつきました。
愛用のツェルトはファイントラックのツェルトⅡロング。
今回は二人ともシュラフは無し。
インフレータブルマットとシュラフカバーの組み合わせで夜を凌ぎます。

双樹はシュラフカバーの代わりにSOL Escape Bivvyを使用。
通気性・透湿性は3レイヤーのシュラフカバーに比べ劣りますが、多少の保温性があります。
肌寒い夜に使っている限りでは、蒸れも気になるほどではありません。

今回の食事はシンプルにアルファ米です。
夜はガパオライスに目玉焼きとサラミをトッピング。
常温で運べる牛乳を持っていき、デザートにフルーチェを作りました。
インスタントのスープやチャイも持っていき、なるべくしっかり水分をとってから休むように心がけます。
朝ごはんは五目ご飯と味噌汁。食器はコップとスプーンのみでアルファ米の袋から直接食べるスタイルです。
夜は匂いの出るものをまとめてフードロッカーに入れておきます。


朝6時20分にテント場を出発。朝日を浴びたチングルマの綿毛がキラキラして美しいです。

昨日下りてきた雪渓を通って稜線まで登ります。
雪渓脇の道が出てきているのでアイゼンは不要でした。昨日の夕方にはしっかり流れていた水も、朝には水量が減っていました。
硫黄山周辺は枯れ沢が多く、湧水があっても火山の成分が混じりほとんど飲めません。その中で貴重な水場です。

稜線まで登り振り返ると遠くに羅臼岳。
稜線は晴れていますが、羅臼町側は雲海のようです。

そしてオホーツク海をバックにそびえる硫黄山。
知床の縦走路の山々はどれも形が特徴的で格好良いです。

2日目はウブシノッタ川への下降。
稜線の標高1,500mから海抜0mのオホーツク海まで一気に下ります。
正面に見えるのは東岳。いざ、下降開始です!!

ウブシノッタ川の源頭部には奇妙な形の岩頭の数々。

雨風に侵食され、硫黄が白く漂白し、このような景色ができたのでしょう。
自然が作り出したサグラダファミリアのようです。
ガウディもどこかでこんな景色を見たことがあるのかなぁと夢想しながら歩きます。

標高1100mで現れたこの段差。
下に降りてみればなんてことないのですが、上から見るとどうやって降りたらいいのかさっぱり分からず。
右岸のルンゼから巻き降りようとしましたが落石が危なく断念。
登る人は左の壁を直登するか左岸を巻いて立木から懸垂しているようです。
今回はまず泉がどかっと座って支点になり双樹を腰がらみでロワーダウン。泉のクライムダウンを、先に下りた双樹が足場になりアシストする作戦で下りました。チームプレイでなんとか突破するのも、沢登りならではです。

下降していくと湧水が出てきて、その都度テイスティング。
しかし、「酸っぱ!!」となり飲めません。酸っぱさの濃さはまちまちですが、この沢の水は飲めません。

滝をクライムダウンしたり、不思議な岩の紋様を眺めながら下降を続けます。

スケールの大きさにまずびっくり。そしてよく見ると洞窟だらけだったり、様々な地層がむき出しになっていたり・・・
足が止まってしまいます。

標高420mで右岸から流れ込む滝。
岩盤から染み出した水が簾のように流れ落ちます。

先ほどの滝をバックに赤いゴルジュで記念撮影。
この沢も沢床は真っ赤に染まっています。鉄分が多いのでしょうか?

赤い滝を懸垂下降。

今回はGROMMET/グロメットのトライサックコンパクト8Lを使用。
大滝の下降に備えてべアールアイスライン8.1mm50Mを持って行きましたが、ほとんどの場面では30Mもあれば足りてしまいます。
ロープの片側を必要なだけ垂らし下まで届いたのを確認。それから、もう半分のロープは下降しながら出していくと不要なロープを出さずに済むのでスムーズでした。

やがて森の中の渓谷になってきます。
木々に囲まれながら見る赤い色は、とても印象的です。

登る人にとっては最初の関門として有名な釜持ちの滝。
懸垂下降に良い支点も無く、結局飛び込みました。
釜の深さはたぶん2mくらい。
つるっとしてて登るのにも難しそう。
「今度、登りに来たら登れるかな〜」と考えてしまいました。

そして知床林道の硫黄山橋の下を通過。
ウブシノッタ川に入渓する際には硫黄山橋から懸垂下降2回で川床まで降り立つのが一般的です。
こんな絶壁の上に橋をかけた先人の苦労が偲ばれます。
ここから河口までは記録がないルートなのでドキドキしながら先へ進みます。
地形図の感じではもう一発大きい滝があるかも・・・

やっぱりあったよ大滝!!
ちょうど良い場所にある立木を支店に懸垂下降。
下降した落差は17〜8mくらい。念の為50mロープを持ってきたので余裕を持って下降できました。
頑張れば右岸の藪のところを登ることもできそう?
この滝の下で標高約140m。海までもう少し!!

そして赤い川はオホーツク海へと流れ込みます。
知床の海岸は岩石がゴロゴロしている印象ですが、ウブシノッタ川の河口は特に巨岩が多い印象です。沢を流されてきているのでしょう。

やっと辿りついたオホーツク海。
沢水と海水が混ざる場所は、化学反応が起きて白く濁っていました。

ここからは海岸線を岬の方へ歩き、知床林道を歩いて帰ります。
林道までまっすぐ登り返すのは大変な地形・・・
せっかくなので知床の海岸ハイクを楽しみましょう。

知床岬方向へ向かって海岸線をテクテク。
海岸線にはヒグマの姿もチラホラ。
若熊は海に入って、波打ち際で餌探し。
体の大きな個体は一定のリズムで悠々と歩きボスの風格。
ヒグマの動きに合わせて進みます。ヒグマ達はのんびり歩いているようでも、意外と歩きが早いです。
みんな進行方向が一緒だったのはラッキーでした。

海岸線を2時間歩いて知床林道が海岸線に降りてくる場所に合流。ここから先は林道歩きです。
奥には知床岳。その先の知床岬までも歩いて行きたくなりますね。
ここでダニチェックついでにフラッドラッシュを脱いで軽装になりました。
靴下もネオプレーンソックスから乾いたウールのソックスにチェンジ。
炎天下の水の無い沢を長く歩いたので、二人とも足の指の皮がボロボロでした。

今回、泉は LA SPORTIVA TX CANYON 双樹はモンベル サワークライマーを使用。
2人ともラバーソールの靴を選択しました。

前回の幌尻周辺の旅ではヌメりが多いため2人ともフェルトソールでした。
その際の様子はこちらのブログをご覧ください↓
https://www.shugakuso.jp/contents/blog/blog-13490/

今回の硫黄沢〜ウブシノッタ川では、 ほとんどヌメリが無く、乾いた区間も多いためラバーソールで快適に歩けました。

TX CANYON(スポルティバ)
→ソールの剛性が高いため、重い荷物を持っても快適。フリクション性能もバッチリで靴を信じて立ちこむことができます。

サワークライマー(モンベル)・KR-3XR(キャラバン)
→ソールが薄く、足裏でヌメリやフリクションを感じ取りやすいです。

今回の沢旅では、硫黄沢序盤の滝の登攀でサワークライマーの足裏感覚が安心感につながり、それ以外の歩き区間ではTXCANYONのしっかりしたソールの方が下からの突き上げも少なく、疲労しにくい印象でした。


最後は2時間45分の林道歩きで20時30分に車に戻りゴール。
2日間の沢旅が終わりました。
火山、花、稜線、真っ赤な川、海とたくさんの景色を見させてもらいました。そしてヒグマと同じテンポで歩く海岸線。
たった2日間でしたが、終わって見ると1週間ぐらい歩いていたような満足感です。もっと知床の奥に入っていきたいなと思わされる沢旅でした。

writer

双樹

双樹